JP-QUESTとは

プロジェクト詳細


はじめに

高齢者は、加齢に伴う生理機能の低下および服用薬剤数の増加により、重複投薬、服薬アドヒアランスの低下、薬物間相互作用のリスクが高くなる ことが知られています。これらのリスクを早期に発見・解決するためには、多職種が連携しながら患者の薬物治療を管理することが求められます。 中でも、薬学的見地から処方内容や患者の状態を評価する薬剤師の役割は重要であり、多職種チームの一員として積極的な関与が期待されています。 しかし、薬剤師の資質のバラツキや薬剤師の役割に関する多職種間での認識の相違などにより、薬剤師が多職種の中で本来の役割を発揮できておらず、 結果として高齢患者の医薬品適正使用が実現できていないことが少なくありません。

そのような中、近年、Quality Indicator(QI)と呼ばれる質評価指標を用いて、医薬品使用の適正化を進める取組みが主に先進国で広がっています。 QIを用いることで、薬学的管理業務の質を数値化できるため、現状把握が可能となります。加えて、目標値を設定した上でPDCAサイクルを回す ことで、目標達成に向けた進捗を経時的に把握することができます。目標達成に向けた活動は、薬剤師だけではなく医師との連携が不可欠で あることから、多職種連携の質も向上することが期待できます。

我々の研究チームは、国際的な開発手順に準拠しながら、厚生労働省がとりまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編・各論編)」を基にして、 高齢患者に対する薬学的管理業務(高齢者ケア)の質を評価するためのQIを計130種類開発しました。皆様の薬局でこのQIを6か月間運用することで、 QIの指標としての妥当性を評価するだけでなく、多剤併用をしている患者様へのケアの質が見える化されて、 結果として1人でも多くの患者様の減薬や相互作用防止等につながれば望外の喜びです。 また、参加薬局全員で集積したデータはエビデンスとして国際学会・国際学術雑誌で発表します。 これは、『皆様の日常業務から作られたエビデンスが海を越えた薬局の業務に影響を与え、 その土地で暮らす人々の服薬支援につながる』ことを意味しています。

このプロジェクトへの参加が、 皆様にとって意義のある6か月間となることを心より願っています。


研究の名称

Japanese Pharmacy QUality Enhancement STrategy (JP-QUEST)

高齢患者に対する薬学的管理業務の質を評価する指標の運用試験:混合研究法
Testing a set of quality indicators for pharmaceutical geriatric care
: a mixed methods study in Japan


目的

本研究は、薬局薬剤師が実施する外来高齢者薬物療法(以下、高齢者ケア)について、高齢者ケアの質を評価するために開発された130種類の指標 (Quality indicator/ QI)を6ヶ月間運用することで、下記の3点を明らかにすることを目的とします。

 1. QIの7種類の指標特性の評価(実行可能性、適用可能性、改善の余地、識別能力、受容性、変化に対する感度、運用上の課題)
 2. 6ヶ月間のQIスコア(プロセス指標)の変化と各種加算算定回数(アウトカム指標)との関係性
 3. QIを用いた薬局業務の質改善活動に対する薬局薬剤師および他職種の意見の集約

これにより、外来高齢者薬物療法の質を評価する際に有用なQIを特定するとともに、実運用に向けた課題を抽出します。


方法

本研究は、保険薬局で保管されているデータを用いた6 ヶ月間のQI 運用試験であり、研究目的を達成するために、量的データ(QI スコア)および質的データ(薬局従業員へのインタビューデータ)を用います。


参加薬局にご協力頂く内容

①2020年7月から6ヶ月間、本研究用に開発されたWebアプリの薬局専用ページにログインし、該当するQIスコアを患者単位で報告
②各薬局専用ページにログインし、自店舗および参加薬局全体のQI スコアをWebアプリ上で閲覧し必要に応じて質改善活動を行う
③各薬局専用ページにログインして自店舗および参加薬局全体のQIスコアを毎月確認
④オンライン上でのグループディスカッションへの参加(任意)
(薬局に訪問させて頂き、直接インタビューをお願いする場合もございます)


日程および内容

日程 内容
2020年2月~7月 研究参加薬局募集期間
2020年7月~2020年12月 ①130種類の評価指標の中から該当する指標のみ毎月1回Web上で報告
②薬局専用ページにログインして自店舗および参加薬局全体のQIスコアを毎月確認
③オンライングループディスカッションへの参加(任意)
2021年1月下旬 研究終了報告会 (東京都内)

※ 原則、株式会社ユヤマから導入頂いた三菱電機ITソリューションズ株式会社の電子薬歴をご利用の薬局様には特別サポートがございます

参加条件

6種類以上の内服薬を4 週間以上服用している75 歳以上の患者(3名以上)に関して、
薬歴記載情報を基にQI 項目の実施有無を 毎月1回6か月間報告して頂ける保険薬局様

応募方法

本研究の趣旨をご理解頂き、研究にご協力頂ける場合は、
必要事項(1.氏名、2.所属薬局名、3.所在地(都道府県)、4.ご連絡先メールアドレス) を下記メールアドレスまでご連絡下さい。追って、詳細をご連絡致します。

連絡先(佐藤):nsat3113あっとuni.sydney.edu.au(あっとを@に変換してください)


募集締切

随時受付中




参考文献

1. Fujita K, Moles RJ, Chen TF Quality indicators for responsible use of medicines: a systematic review BMJ Open 2018;8:e020437. doi: 10.1136/bmjopen-2017-020437

2. Sato, N., Fujita, K., Kushida, K., Chen, T. Exploring the factors influencing the quality of “Health Support Pharmacy” services in Japan: Perspectives of community pharmacists. Research in Social & Administrative Pharmacy 2020 https://doi.org/10.1016/j.sapharm.2020.02.012